カフェのように居心地がよく
人が集って「いい時間」が過ごせる家

ロングライフデザイン
を訪ねてイエ

  • 夫 Mさん
  • 妻 Y子さん

19年目のご夫妻に聞くロングライフの秘密

一級建築士のY子さんが設計し、フクダ・ロングライフデザイン(当時は福田工務店)が施工して2006年3月に完成。夫のMさんが2021年から海外に赴任し、長男は就職して一人暮らしの後に転勤で自宅へ。現在はY子さんと31歳の長男、26歳の長女、愛猫3匹の暮らしです。

※記事中の年数などは取材時のものです。

カフェのように居心地がよく
人が集って「いい時間」が過ごせる家

2階のLDKに足を踏み入れると、お菓子の焼ける甘い香り。分厚い木の床は経年変化で味わいを深め、キッチンの棚にはぎっしりと作家ものの器。完成当時、「カフェみたいな家」の草分け的存在だった近藤さん宅は、19年を経てもおしゃれさが色あせることなく、心地よさはさらに増しています。

「おもてなしが好きなんです。だからカフェのようなほっこりできる空間に、人がワイワイ集まってほしいなと思って」とY子さん。自ら設計したこの家には、そんな工夫が詰め込まれています。「福田社長と一緒に、お気に入りのカフェ巡りをしたこともありましたね。『ここはこんな感じにしたい』と伝えるために」とプランニング当時を振り返ります。

夫のMさんは何か希望はあったのでしょうか?「いやー、全くなかったですね。書斎がほしいと言ったくらいかな。とにかく妻が毎日、フクダさんの担当者と2時間くらい電話で話しているのを見ていると、何も口を出せませんよ(笑)」。それでも決して無関心というわけではなく、カフェ巡りの思い出話になると、「あのときはパーツを見てもらったんじゃないかな」と補足されるなど、Y子さんに寄り添われている姿勢が微笑ましく感じられます。

かつてのダイニングが今はコンパクトなソファリビングに

「イタリア料理やブーケの先生を招いてレッスンしたり、自家製酵母パン作りにはまったり。この家のおかげで活動が広がりました」

もともとお料理好きだったY子さん。キッチンは「厨房風に」と希望し、ステンレスの広いカウンターに4ツ口コンロを備えたキッチンをオーダー製作しました。「いつかここでカフェのようなことができたらいいな」とぼんやり思い描いていたそうですが、自然な流れで始まったのが先生を招いての料理&ブーケのコラボレッスン。「先生がキッチンで調理される様子を、生徒たちはメモを取りながら見学するスタイルです」。多いときは10人もの生徒さんが参加するそう。なるほど、広くてオープンなキッチンだからこそできるレッスン風景です。

レッスンの後はお料理をずらりと並べて試食会。そのためにダイニングのスペースを広いリビングと入れ替えました。「ダイニングとリビングをくっきり分けないプランなので、臨機応変に使えてよかったです」。ところが皿数が多いのでテーブルに載り切らないという事態に。「それで夫に頼んでテーブルを拡張できるようにしてもらったんです」。それがDIYとは思えないほどの見事な出来。もとのテーブルの上にひと回り大きな天板をかぶせ、マグネットで固定する仕組みで、ぐらつかず、着脱もラクにできる優れものでブーケレッスンの時も大活躍しています。

パンづくりにも熱心に取り組み、自家製酵母パン教室に通っては自宅のキッチンで復習。今ではクロワッサンからハード系まで焼けるように。コラボレッスンの時にお出しする栗の渋皮煮入りカンパーニュやシナモンロールは大人気で売ってほしいと言われるほどです。

お料理教室にパンづくり、もちろん毎日の家族の食事準備と、ガンガン使っているキッチンですが、「食洗機が壊れたから取り換えただけで、あとは完成当時そのままです」。シンプルで頑丈なつくり、耐久性のある素材。必要な機能は備えながら、余計な小細工は省いたキッチンだから、使い込んでもびくともせず、機能美を保ち続けているのでしょう。

取材の最中に香ばしく焼き上がった自家製パン

3匹の愛猫が自由気ままに家の中を行き来している

「僕は施工担当(笑)。建具や棚や猫用のドアなど、妻が描いた図面をもとにDIYしています」

前述の「テーブル拡張システム」でも垣間見えたMさんのDIYの技、実は家のあちこちにさらにすごい作品があります。たとえば洗面所とパントリーの間仕切り。「お料理レッスンのときにここを行き来できる方が便利だと思って、壁を撤去して引き戸を取り付けたんです」とさらりと語るY子さん。図面を描いてMさんにつくってもらったのだそう。パントリーの中に棚をつくったり、2階の納戸を広くしてデスクを造り付けるなど、すべて「Y子さん設計+Mさん施工」で実現したものです。

LDK入り口の引き戸にもかわいい工夫が。「猫たちが出入りするから冬も引き戸を少し開けてたんですが、寒いじゃないですか。どうにかできないかと思って」。考えた末にできたのが猫用の入り口付き建具。引き戸の端に設置し、猫たちは分厚いフェルトをかけた小窓から出入りします。夏は外せば引き戸を全開できるという便利グッズです。

Mさんはお仕事が建築関係というわけではなく、昔から日曜大工が好きだったのでもないそう。「この家でDIYの腕が鍛えられたんじゃない?」とY子さんが言うと、「でもマンション住まいのときもみんなが集まれる大きなテーブルをつくったよ」とのお返事。やはり「人が集まる」というのが夫妻の一貫したテーマであり、それがこの家でさらに花開いたといえそうです。

「この家に帰ってくるとホッとする」と微笑むMさん

Y子さんの要望でダイニングテーブルをMさんがDIYで拡張

「器選びの基準は『お料理が映えること』。好きな器は見えるように収納し、どんどん普段使いします」

19年を経てかなり変わったのは、キッチンのオープン棚かもしれません。以前はゆとりをもって収納されていたのが、今はぎっしり状態。それでもごちゃついた印象がないのは、「好き」にこだわって選んだものだけが並んでいるから。特に増えているのは作家ものの器です。

「お料理が映える器、美味しそうに見える器が好きなんです」とY子さん。信楽の陶器市や作家の個展で選んだ器をオープン棚に収納し、おもてなしのときはもちろん、普段の食卓にもどんどん登場させています。そんなY子さんの志向はご家族にも影響を与えているようで、「娘が最近料理をするようになったんですけど、何も教えていないのに同じような盛り付けをするのでビックリしました」。

料理に合わせて食器を選ぶのも楽しみのひとつ

今年作ったジャムやお気に入りの食器が整然と並ぶ

「お客様が来てくれると、ガーッと片付けるから家がきれいになっていいですね(笑)」とお二人。実は以前は完ぺきを目指すあまり、掃除や片付けに疲れることもあったそうですが、「今はほどよく手を抜くことを覚えました」。お二人の自然体に磨きがかかり、訪れる人もよりくつろげそう。

もとの家の居心地よさを生かしながら、DIYで手を加え、素敵な器や小物をプラスして、お料理やおもてなしの腕を上げる。近藤さん夫妻の「カフェのような家づくり」は現在も進行中です。

趣味のお菓子づくりの腕前はプロ並み

家族の年表や料理教室の写真に話がはずむ

Our Favorite

Mさんのロングライフなもの

結婚前に妻から貰った手編みのセーター

手編みのセーターです。大学時代に妻がプレゼントしてくれたもの。40年くらい前ですかね。付き合い始めた頃。ずっと頻繁に着ているわけではありませんが、今も着ていますよ。昨日も着て出掛けていました(笑)

Y子さんのロングライフなもの

子どもの頃から使っているピアノ

小学校6年生くらいのときに買ってもらったピアノです。引っ越しのたびに一緒に持っていき、この家を建てるときも一番いい場所に置き場を決めました。譜面立てのデザインがちょっと変わってて気に入ってるんです。

取材を終えて

「カフェみたいな家」は今も家づくりの人気ワードの一つですが、デザインやパーツを真似るだけでは完成しないのだと、近藤さん宅を訪れて実感しました。もちろん、居心地いい「箱」がベースにあってこそですが、それに加えておもてなしへの強い思い、好奇心とチャレンジ精神、ゆったりした包容力、すべてがミックスされて、この空間になっているのだなあと。流行りのワードを超えた、地に足ついた大人の「カフェみたいな家」を見せていただきました。

取材日 2025年1月5日
  • インタビュー・執筆 佐々木由紀

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