現在、弊社初のパッシブハウスの認定取得を予定している現場(西宮市)もいよいよ佳境です。
そこで、私たちがパッシブハウスに取り組む意義について整理したいと思います。
■パッシブハウスとは?
そもそもパッシブハウス(Passive House)とは、「超高断熱・高気密性」と「熱交換型換気システム」を組み合わせることで、年間を通じてごくわずかなエネルギーで快適な室内環境を実現できる住宅・建築物のことです。
1991年にドイツのヴォルフガング・ファイスト博士らが最初のパッシブハウスを建設し、その後1996年に設立された「パッシブハウス研究所(Passive House Institute, PHI)」が基準策定や認証を行っています。
1991年にドイツのヴォルフガング・ファイスト博士らが最初のパッシブハウスを建設し、その後1996年に設立された「パッシブハウス研究所(Passive House Institute, PHI)」が基準策定や認証を行っています。
▶パッシブハウスの基本的な考え方
•建物の断熱性能と気密性能を極限まで高める
•室内外の熱移動を最小限に抑えるために熱橋(熱が伝わりやすい部位)の徹底的な排除
•熱交換換気システムによって換気時の熱ロスを大幅に削減
•太陽熱や日射遮蔽などのパッシブ(受動的)な手法で暖房・冷房負荷を低減

これらにより、暖房・冷房エネルギーを従来の住宅に比べて80~90%以上削減しながら、快適性や健康的な居住環境を高水準で保つことができます。
■パッシブハウスがもたらすメリット
住まい手の直接的なメリットと社会にもたらす間接的なメリットの4つのメリットがあります。
1. 大幅なエネルギー消費量の削減
・パッシブハウスの暖房・冷房の年間消費エネルギーは15 kWh/m²以下であり、一般的な日本の既存住宅では、暖房・冷房だけで120~150 kWh/m²ほど消費する場合があるため、約10分の1程度に抑えられます。
・また建物全体で仕様する一次エネルギー(給湯・照明・家電含む)消費量も120 kWh/m²以下を目標とするため、非常に小さなエネルギー使用量です。
2. 光熱費の削減
・ヨーロッパの事例では、従来住宅の暖房費が年間1,500ユーロ(約24万円)程度かかるところを、パッシブハウスでは300〜400ユーロ(約5〜6万円)に抑えられるという報告もあります。
・日本の事例においても、年間の暖房費が数千円~1万円台で済むケースがあります。
3. 高い快適性と室内環境の向上
・冬でも窓や壁の表面温度が室温に近く、コールドドラフト(窓際の冷気)が生じにくいため、壁内や窓周りでの結露やカビの発生が大幅に抑えられ、健康的な空気質を維持できます。
・熱交換型換気システムの採用により、24時間換気を行っても室温変化の影響を最小限に抑えます。
4. 環境負荷(CO₂排出)の削減
・暖房や冷房の燃料・電力消費が大幅に削減可能で、年間で数百~数千kgのCO₂削減が見込めます。
・エネルギー源を再生可能エネルギー(太陽光発電など)に置き換えることで、カーボンニュートラルに寄与できます。
では、パッシブハウス研究所(PHI)が定める認定基準とはどの様なものなのでしょうか?
■パッシブハウスの要件
1. 年間暖房需要・冷房需要|15 kWh/m²/年以下
もしくは、暖房負荷(設計上の最大負荷)で10 W/m²以下であること。
2. 一次エネルギー消費量|120 kWh/m²/年以下
暖房・冷房・給湯・照明・調理・家電を含め、建物全体でこの基準を下回る必要があります。
3. 気密性(n50値)|0.6回/h以下
一般的な日本の新築住宅は3~5回/h程度、既存住宅では10回/h以上になることも多く、パッシブハウスは圧倒的に気密性能が高いと言えます。
4. 熱交換換気システムの導入|熱交換効率(熱回収率)75%以上
外気導入時の温度差を極力小さくすることで、室内温度を快適に保ちながら換気を行います。
5. 高性能な開口部(窓・ドア)|熱貫流率(U値)0.8 W/m²K程度
この性能は、日本の一般的なアルミサッシ窓(U値2.5~6.0 W/m²K)と比べて3倍以上の断熱性能を持ちます。
6. 断熱性能(外皮性能)の向上|外皮平均熱貫流率(UA値)0.15 W/m²K程度
外壁や屋根、床下の断熱性能を高めると同時に、熱橋を徹底的に排除する設計が求められます。
この様に、どうしても数値が飛び交ってしまうのですが、少々長くなりそうなので(汗)、今回はこの辺りでお終いにします。
※次回のBLOGへ続く