日射取得性能

2023年6月19日更新

こんにちは。
設計の田中です。

前回は建物の断熱性能を表す性能値のお話をさせていただきました。
中々難しいお話だったかもしれませんが、今回はその続きです。
建物の性能を表す代表的な性能値として、「日射熱がどれだけ建物に入ってくるか」を表す数値

「η値(いーたち)」

という値があります。

この「η値」は、夏と冬の太陽高度の違いを考慮して「ηAC(いーたえーしー)」「ηAH(いーたえーえいち)」に別れており、それぞれ「夏期日射取得率」「冬期日射取得率」を表しています。
つまり夏と冬それぞれにどのくらいの割合で太陽の熱が入ってくるか、を表す訳です。
これは以下の計算式で表されます。
ηAC,AH=”建物が取得する日射熱量の総和” ÷ 外皮面積 × 100
この”建物が取得する日射熱量の総和” がもう一段階理解が必要な箇所です。


上の図のように、建物には大きくは3箇所から太陽熱が入ってきます。

①屋根or天井(屋根断熱もしくは天井断熱)
②外壁(東西南北それぞれ)
③窓(東西南北それぞれ)

①と②は断熱材が入っている箇所なので、直接日射が入ってくるというよりは外部表面に当たった太陽熱がその部材を温め、順々に部材を温めていった結果入ってくるというイメージです。
この箇所の日射取得量は断熱材の性能(材の性能と厚み)に直接左右されますので、断熱性能=日射遮蔽性能となります。
③だけ(正確にはガラス部分)は少し特殊です。
ガラスは透明な部材で何割か反射しつつも、太陽熱を透過させる性質があります。
これはガラスの性能によって透過率が変わってきます。
例えば、昔ながらの単板ガラスは8割〜9割の熱を透過しますし、最近のLow-Eトリプルガラスでは2〜3割しか透過しません。
これに各方位と季節(夏か冬)によって変わる係数を掛けると、それぞれの日射熱取得量が算出されますので、
これを足した物が”建物が取得する日射熱量の総和” =m値(えむち)です。

m値も夏と冬にそれぞれ計算されますので、mC値とmH値があります。
太陽熱に関わる性能はを紐解いていく事で、熱的な住環境は断熱性能のみで決まるような物では無いことがわかってきます。
断熱仕様だけではなく、窓の設計によって大きく変わってくるこの性能は、
敷地条件や要望をうまくまとめ上げることができなければ良くはなりません。
何を理由にどのくらいの数値を目指してプランを調整していくのかが大事な、
非常にプランニング能力を問われる場所だと考えています。


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