こんにちは。インテリアエディターの藤岡信代です。
今回からは、「収納がラクになる家のつくりかた」と題して、ストレスフリーな収納の仕組みをつくるヒントをお届けします。
第1回のテーマは、「収納がうまくできない理由はなんだ??」。ズバリ、片づけられないオンナの私(笑)が、収納について難儀してきた理由を掘り下げてみようと思います。
インテリアエディター 藤岡信代さん
インテリア雑誌『PLUS1LIVING』ハウジング雑誌『はじめての家づくり』などの編集長を経て、現在では『編集脳アカデミー』主宰として住宅や編集に関するセミナーやコンサルティングを行う。
引っ越しを機に「片づけられないオンナ」に逆戻り…
子どものころから部屋の模様替えが大好き。長じて出版社でインテリア雑誌の仕事をするようになり、「私はインテリアが大好き!」と思ってきました。いえ、それは今でも変わりません(力説!)。インテリアショップ巡りをすると心が癒されるし、素晴らしいデザインに出会うと心が躍ります。でも……、部屋を片づけるのは苦手です。すぐに散らかってしまう。
インテリアは好き。だけど、収納は苦手。そんな人は意外に多いのではないかと思います(ちょっと言い訳めいていますが(笑))。だから、たくさんの収納本を読み、収納の先生の取材をし、片づけのレポートや収納アイディアの記事などを書いてきました。おかげで、すこーしずつ片づけられるようになってきたのですが、昨年の秋に久しぶりに引っ越しをしたら、見事に「片づけられないオンナ」に逆戻りしてしまったのです。これは久々のショック!でした。
なんとかせねばと思いつつ、誰にも相談できない状態でいたとき、『ライフオーガナイズの教科書』という書籍の編集を担当することになりました。打ち合わせの途中で、実は、わが家が全然、片づかないことを告白(笑)。そんなことなら…と、取材の一環で、ライフオーガナイズのサービスを実体験&レポートすることになったのです。
恥ずかしながら、段ボールが積みあがったわが家のリビングが登場しています(汗)。このときは、本当に頭も手も動かなかった。どこにものを収めていいのか、わからなかった……。まさにフリーズ状態でした。
今回、ライフオーガナイザーの方のサポートを受けてみて、気づいたことが一つ、あります。収納がうまくできない理由は、収納に対する“思い込み”が原因なのでは?ということです。
ライフオーガナイザーとは
ライフオーガナイザー®とは、個人や企業の「整理整頓」を手助けする技術資格のことです。アメリカでは「プロフェッショナル・オーガナイザー」と呼ばれ、NAPO(National Association of Professional Organizers)が監修する認定資格の保有者は全米に4,000人以上いると言われています。住居や仕事、生活など、暮らしに関わるあらゆることの問題発見と問題解決を手助けするオーガナイザーの仕事が注目を集め、アメリカのテレビ番組や雑誌で取り上げられています。日本では、一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会が初めてライフオーガナイズの概念やノウハウを体系化し、日本の社会背景や住宅事情などを反映した資格として認定制度を構築しました。
ものをどこに収めるか?の判断は、何を基準にしていますか?
新しい住まいに引っ越す前の私は、中古物件をリフォームしたマイホームでそれなりに片づけて暮らしていました。5年の間に、ものが2倍近く増えてきて、ちょっと散らかってきたな~と思ってはいたけれど、把握はできているつもりだったんですね。
ところが、新しい住まいでは、うまくいっていた収納の形と根本的に違うところがでてきたんです。
たとえば、キッチンキャビネットは引き出し式で、取り出しやすく収納できていたのが、開き戸式に変わってしまい、そのまま移動するだけでは済まなくなった。
たとえば、洗面脱衣室に下着とタオル用のチェストを置いて気持ちよく暮らせていたのが、チェストを置けるスペースがなくなった。
たとえば、寝室にオールシーズンの寝具を入れる収納スペースがあったのが、クローゼットだけで寝具用のスペースがなくなった(つまりベッドを置く想定の部屋になっているが、私は布団を敷いて寝ている)。
こんな具合で、「このモノは、どこに収めると使いやすいのかな?」と、一から考え直さなければならなくなったんですね。
一から考え直さなければいけないのに、私の頭の中には「このモノは、こういうふうに収納するものだ」という思い込みと、「前の家では、この方法でうまくいっていた」というこだわりがある。目の前にあるのは、そのどちらにも当てはまらない収納スペース。どうしていいのか、わからない。思考がフリーズ。段ボールのまま放置……。
片づけられない私の頭の中の状態をひもとくと、こういうことだったのです。あぁ、邪魔をしていたのは、“思い込み”なんだ、と思いました。
収納は“ものをおさめること”ではなく、“仕組み”と考えてみる
収納に対する思い込みがどこからきているか、冷静に考えてみると、まず育ってきた実家が大きいと思います。最初に体験した収納スペースの使い方を、何の疑問もなく取り入れて、使いづらさがあっても、そもそも気づかない。
思い当たることはありませんか?
私は、ライフオーガナイズのサービスを受けてみて、つくづくそう感じました。一つ一つのものを「どうしまうと使いやすいか?」「どう使いたいか?」、あらためて尋ねられると、まともに答えられないのです。つまり、考えてこなかった、ということ。思い込んでいる、ということ。
もっと言えば、「ものは、収納する場所があればいい」と思っていたのかもしれません。使いやすいか?とか、どう使いたいか?とか、まるで関係なく、置き場所があればいいという感じ。収納の本を読むと、必ずといっていいほど、「ものは使ってこそ価値がある。だから使いやすい場所に収納する」と書かれています。
でも、収納場所=置き場所の感覚は、根強く私の中にあるんですね。本当は、「使いやすい場所」というところに意味があるのに、「(決まった)場所に収納すればいい」と思っていた。
そして、使いやすいかどうかを考えるというのは、「仕組み」を考えることなんだとあらためて感じました。仕組みのほうに「正解」を持っていれば、スペースがどんな形になろうと、大きさが変わろうと、極端な話、スペースがなかったとしても、対処できるのではないか、と思ったのです。
次回からは、「収納について、どんな思い込みがあるか?」、そして「どんな仕組みを考えればいいか?」の2つにフォーカスして、場所別の収納のつくりかたを考えていきたいと思います。
References & Thanks to
Fujioka Nobuyo