さて今回は『デッキテラスのある北生駒の家』第1回、
計画課題.②の最適解を導くための方法論についてご紹介したいと思います。

 
土地探しからスタートされたご家族3人の2階建てのお住いです。
 

計画地は1990年代に近鉄不動産により開発された新興住宅地で、駅から程近い街区です。
南側に6M道路、敷地と道路の関係は約1Mほどの高低差、
周辺はプライバシーを考えられた1.5〜2.0Mほどの石積擁壁による高低差がある、
外壁後退1.5Mの第1種低層住居専用地域に指定された約70坪の土地です。

ご要望は
・SE構法で広々とした開放的な空間づくり
・薪ストーブでくつろげる空間
・パッシブデザインを取り入れられた自然と調和した家
・南東方向の眺めを大切にしたい
・LDKで一緒に過ごしたい
・子供が2階で過ごしていても気配が感じられるように
・各部屋に計画された収納スペースが欲しい
 

 
計画の課題及び提案
①.土地利用計画とゾーニング計画
②.プライバシーの確保と終日日射取得の両立
 
 
検討を重ね最適解に至った方法論ですが、
②.本計画では真北は建物に対して30度以内で東西に長い建物形状、
晴れた日は終日日射取得が得られます。
パブリックエリアであるリビング・ダイニング・キッチンの道路側に面する南面の窓は、
周辺建物から影響を受けることはありませんが、日射取得用の窓がプライバシーを守れなければ、
大きく開放した窓はカーテン等締めてしまう結果となり、熱取得が十分にできません。
そこで最大1.6Mの道路高低差を活かしながら南面と西面に通風が可能なウッドフェンスにてプライバシーを守ります。

その窓の開口率について、パブリックスペースから繋がる内装建具で仕切る部分を暖冷房エリア（主たる居室）とし、
そのエリアは床面積に対して周辺建物からの影響を受けず日射取得を受けることができる南面の窓を20%以上とし、
かつ一定時間の熱取得を目標にしています。
上記の目標達成をしたパブリックエリアでは、晴天の日には冬期暖房機器がなくても室温は20度まで上昇します。
そのための窓は、リビング・ダイニングの掃き出し窓、吹抜けはダイニングと同サイズの掃き出し窓、さ
らに吹抜けからつながる2階のセカンドリビング（ヌックスペース）からスカイデッキに繋がるこれらの窓の合計で、
パブリックエリア床面積の20%以上確保することができます。

前回のブログにて若草山への眺望を楽しむためスカイデッキを紹介し、
そのスカイデッキについてパッシブデザインの役割もご紹介したいと思います。
スカイデッキは日射遮蔽の役割を担っており、ヌック及び吹抜け2箇所の窓に遮蔽部材の
外部ロールスクリーンを設置してスカイデッキから開閉操作を行います。
スカイデッキは奥行きが1Mあることで遮蔽部材としての効果は高いですが、
冬期の日射熱取得に対して奥行きがあることで不利に働きます。
当社では庇等を設置する場合には、窓高さの1/4の奥行きが冬期夏期ともにバランスが良いため設計ルールとしています。
1Mの奥行きでも冬期の太陽高度からスカイデッキの高さを設定すれば十分な日射取得が得られますので、
ヌック空間をスカイデッキから腰掛けの高さに設定して熱取得と眺望を楽しむ行為、
双方の機能を持たせた提案を行いました。

続いて空調計画についてご説明したいと思います。
1、2階の空間のつながりを最大限に活かしたいご要望は、主
たる居室面積共に体積が大きくなりエアコンの必要能力が大きくなってしまいます。
特に冬期の暖房を使用する期間中（光熱費の約30%を占める）は、
大きな空間全体を常に温める必要があり一次消費エネルギー量（光熱費）が増加してしまいます。
そこで大きな空間全体を温める必要のない時には、エリアを仕切ることで
空間を温める体積を小さくすることができる措置を講じることが必要です。
2階が1階とつながる部分は吹抜けと階段ですので、吹抜けエリアを仕切るため
天井面に折上げ部分を作り簡易にロールスクリーンで仕切る、
また階段には同じく天井面の折上げ部分にロールスクローンと手すり壁と同じ高さで引き戸を設置します。
夏期においては、子供部屋に間口1間ほどの開口を設け、隣接するセカンドリビングから吹抜け、
さらに1階へと直線的に繋がるエアコン配置で効率よく冷やすことができるような工夫も取り入れ、
エアコン台数を減らす提案をいたしました。